東京日記

日々の記録

2022年6月4,5,6日 川崎

4日早朝、近所で唯一早朝から空いていたパン屋に初めて行く。昭和の店構え、クリームパン、チョココロネ、ジャムパン、といった昭和のパンたち。チーズパンとアップルパイを買う。レジで店番のおじいちゃんが、今日も暑くなりそうだね、いやだね、と可愛く言う。これから気温が上がっていく、その手前の生温い、ひさしぶりの朝の匂い。

用事のため、同じ場所に三日連続で通っていたので、記憶が混ざり合っている。

電車の車両の連結部に隠れて着替えをする男の子。

乗り換えの駅と駅(別の路線の)が想像以上に遠く、滅多に行くことのない、でも一度だけ行ったことのある街の、住人と乗り換えの人々が入り混じった商店街を不思議な気持ちで歩いたこと。

6日夕方、ようやく用事をすべて終えてほっとしたのか、本当は毎日越えていたはずの多摩川を初めて目にした。

2022年6月3日 自宅周辺(大雨)

オンラインで用事があったため、ほとんど自宅で過ごす。雷と豪雨とマンションの内装工事の音。体調も悪く、苦手なZoomのせいで、気付いたら現実感が薄れていた。

日が暮れる前に外の空気を吸おうと思い、緑道を通って商店街のほうへ。お肉屋さんで揚げ物を買う。帰りに公園に寄って、でもベンチが濡れていそうだったので、すぐに引き返して、家に戻った。

2022年5月31日 日本橋、東京駅(雨のち曇り)

アーティゾン美術館で、柴田敏雄鈴木理策の展示をみる。

見終えて、近くのカフェで古井由吉のエッセイ『ひととせの』を読んだ。半透明の目隠しが貼られた窓越しに、夕方の光とそれを遮る人の影が動く。一際明るい何か、と思って顔をあげると、黄色いバス、はとバスが交差点を曲がり、窓のほとんどを覆った。

帰りに、車で来た友人から、道路脇でキムチをもらった。

2022年5月30日 三軒茶屋(晴れ)

昨日書いた通りに、朝方一度起き、エアコンをつけ、二度寝をして、起きた。

今日中に返さなくてはいけない本があるので、近所のカフェでそれを読み切って、図書館のポストにそれともう一冊をするすると注ぎ込み、また別の図書館まで歩く。

途中で追い越したおじいさん二人のうち一人が、今〇〇駅の方向へ歩いているんだよ、と話しているが、いや、じいさん、それは逆方向なんだ、と頭の中で突っ込む。こういう時、進んでいる方向が実際間違っている場合もあるが、案外、方向は正しくて、口にしている地名のほうが間違っている場合もある。そして、どちらも間違っているパターンもある。

6冊返却して軽々としたカバンに、だいぶ気持ちもすっきりするが、家にまだ読み終えていない本が何冊もある。無職のはずなのに、締め切りの代わりに返却日に追われて、毎日なんだか忙しい。いい加減こんな生活はやめて、優雅に本を読みたい。結局、本を読みたい。

髪を切るために電車に乗って三茶へ。新しく出来た本屋に寄って、カバンにまた2冊本が舞い戻る。古井由吉のエッセイと、松本竣介の絵がついた尾形亀之助の詩集。本屋の下のカフェでお茶をして、家から持ってきた本を読む。イーフー・トゥアン『個人空間の誕生』。寝れなくなるだろうなと思いながら、珈琲を飲んで、いちじくのタルトを食べる。年々、食べるのが下手になっている気がする。小さい頃はもっと上品に食べていなかったか?気のせいか。ものをうまく掴めないし、必ずポロポロと落とす。

美容院では、きのこ話と発酵話で盛り上がり、げらげら笑っていたら、髪の毛が出来上がっていた。きのこは雨を降らすことが出来るらしい。

帰宅して、鍵を開けようとカバンの中を探っても感触がない。まずいなと思って頭を上げると、鍵が鍵穴に刺さっている。これは鍵をなくすよりまずいなと思いながら、部屋に入って、現金、通帳、カードなどひと通り点検する。取り込んだ洗濯物も、机の上も、何も動いた形跡はない。問題なさそう。いや、合鍵作られてたらどうするんだ問題がある。さて、どうしよう。

今夜はなんだかそわそわするな。恋でもしてるのかしら。

2022年5月29日 自宅(晴れ)

最近は暑さのせいで朝方に目が覚めて、エアコンをつけてから二度寝する。ちゃんと起きたのは13時前で、いつも起きるのは遅いけど、さすがに遅い。いつか早起きになるかと思って、去年の秋に引っ越した時に遮光カーテンを選ばなかったのだけど、夏の東向きの朝の眩しさを舐めていた。

洗濯機を3回まわして、シーツ、タオル、仕舞っていた夏服、インナー、靴下、と次々に洗っていく。ハンガーもピンチも足りない。その間に横着していた部分の掃除などをして、かなりすっきりする。

クローゼットの中も整理して、机に積み上がっていた本を並び替え、図書館に本でも返しに行くかと思いながら、結局外には一歩も出なかった。

日が暮れて、取り込んだ服にアイロンをかけ、そうこうしているうちに、開けた窓から虫が入り込んだ。ジージー鳴いたり、たまに暴れるそいつともう何時間か過ごしているけれど、朝になったら勝手に出ていってくれるかしら。寝ている間に近づいたりしないでね。

2022年5月28日 代々木上原、井の頭線沿線

日記に何を書いて、何かを書かないか問題について。

そもそも認識していない、書く前に忘れた、どうでもいいと判断した、プライバシーの観点から書かないと判断した、早く忘れたい、描写したり説明したりするのが面倒くさい、別の形式で記録を残したから除外した、言葉で表現するには難しくて断念した、あまりにも強度のある経験でまだ消化できていない出来事、それらの膨大な記憶の出涸らしのような、薄い、でも微かに残る、ここで書き留めないと二度と思い出せないくらいの出来事が日記には合う。

駅の地下のホームのどん詰まりとそれに並行する通路。

「もうすぐ韓国行けるじゃん」

「そう、李先生がね」

斎場の脇の空き家になっている平屋の建物。

東京ジャーミーの塔の上の部分。

ひたすらうなずく人。

挙動不審な自分の言動。

ホームの上の人の密度。

井の頭線下北沢駅構内の妙な位置にあるベンチ。

碁盤の目上(たまに行き止まりあり)の住宅街をジグザグに歩いて、おじいちゃんを追い越す。

きれいなふわふわのチーズケーキ。

 

昨日は、帰りの電車がとてもゆっくりで、すごく明るかった。